カイエンペッパー(唐辛子)

カイエンペッパー(唐辛子)

Capsicum annuum

科: ナス科 使用部位: 果実(乾燥・粉末)

主な成分

  • カプサイシン
  • ジヒドロカプサイシン
  • ノルジヒドロカプサイシン
  • カプサンチン
  • カプソルビン
  • ケルセチン
  • ルテオリン
  • ビタミンC

伝統的な利用

  • コロンブス以前のアメリカ大陸での使用——メキシコからペルーまで、複数の文明で記録あり(少なくとも6000年前)
  • 1493年以降の世界的な普及——ポルトガル・スペインの交易商人が南アジア、東アジア、アフリカ、東欧に50年以内に広める
  • インドのアーユルヴェーダ・民間医療——16世紀以降(コロンブス交換後)
  • 伝統的中国医学・朝鮮医学——16世紀の導入後に組み込まれた
  • 日本料理——七味唐辛子、ラー油、柚子胡椒;16世紀末から
  • 商業的カプサイシン製剤——局所鎮痛用途;催涙スプレー(OC)にも使用
カイエンペッパー(唐辛子) botanical illustration

カプサイシンによる「灼熱感」は、傷ではない。脳が「熱い」と思い込んでいるだけだ。

カプサイシンが活性化する受容体——TRPV1——は体の熱センサーだ。通常は約43℃以上の温度で反応する。カプサイシンはこの受容体に結合し、温度変化なしに同じ信号を発生させる。口は「何かが燃えている」と報告する。実際には何も燃えていない。熱センサーが反応したという意味では正確だが、実際に熱があるという意味では不正確だ。唐辛子の植物は哺乳類の神経系にこの嘘をつき続け、何百万年も効果を発揮している。

唐辛子について

Capsicum annuum はその名が示すより広い範囲をカバーする。パプリカ、ハラペーニョ、カイエンペッパー、セラーノ——すべて Capsicum annuum だ。同じ種の異なる品種。辛さの大きな幅(パプリカはほぼゼロ、カイエン系品種は3万〜5万スコヴィル)は、カプサイシンの生産量の違いから来ており、別の植物種ではない。パプリカとカイエンは同じ植物だ。一方がカプサイシンを作らないことを選んだ、というだけで。

カプサイシンは Capsicum 属でのみ生成される。他の植物は作らない。果実内部の胎座——種子を支える白い組織——に集中しており、一般的に「種が辛い」と思われているが、種子自体は辛くない。種の辛さは胎座に接触しているからだ。

500年かけて、誰もが「うちの伝統食材」にした話

Capsicum はアメリカ原産。考古学的証拠では、メキシコ、ペルー、カリブ海での使用は少なくとも6000年前まで遡る。コロンブスが1493年にヨーロッパへ持ち帰ったとき、彼はコショウ(Piper nigrum)の仲間だと判断した。まったく違う——植物学的に別の科で、辛さの化学成分も異なる。「ペッパー」という名前は定着した。混乱は今もすべての食料品店の商品ラベルに残っている。

ポルトガル・スペインの交易商人は Capsicum を異例の速さで世界に広めた。わずか50年ほどで、唐辛子はインド料理、韓国の発酵食品、タイのカレー、中国の四川料理、ハンガリーのパプリカに組み込まれた。今では古く地域固有に見える料理が、祖父母の世代の記憶のうちに世界の反対側から届いた植物を中心に再構成されていた。この過程に関わった誰もが、特に驚いた様子はなかったようだ。

唐辛子なしのインド料理。辛さなしの韓国キムチ。青唐辛子なしのタイグリーンカレー。ハンガリーのグーラッシュにパプリカなし。これらは遠い昔話ではなく、実際にあった歴史的な可能性だ。唐辛子入りのバージョンが、新しいバージョンだ。それがオリジナルだと誰もが思っている。

誰もが驚く、辛さの化学の話

カプサイシン(8-メチル-N-バニリル-6-ノネンアミド)が主要化合物だ。近縁のジヒドロカプサイシンは同程度の辛さを持ち、多くの場合第二の主要成分となる。この二つがほとんどの唐辛子の辛さの大部分を占める。ノルジヒドロカプサイシンをはじめとするマイナーなカプサイシノイドが全体のプロファイルを構成する。

カプサイシンが活性化するTRPV1受容体は哺乳類に存在し、鳥類にはない(または反応しない)。これは偶然ではない。鳥は種子を丸ごと飲み込んで別の場所に運ぶ——植物の種散布に役立つ。哺乳類は咀嚼し、種を破壊する——植物の種散布に役立たない。カプサイシンは選択的な抑止剤だ——種を傷つける動物には痛みをもたらし、種を運ぶ動物には無害。植物はこの方針を非常に長い間、一貫して実施してきた。

もうひとつの注目すべき成分:カプサンチンとカプソルビンは赤い唐辛子の色を作るカロテノイド色素。生の赤唐辛子のビタミンC含量は高く、熟した赤唐辛子は重量あたりで柑橘類よりビタミンCが多い。どちらもカプサイシンへの注目の影に隠れてきた。

カプサイシンは脂溶性だ。水には溶けず、広がる。乳製品が効くのはカゼイン(タンパク質)がカプサイシンと結合するから。アルコールは溶かす。これは民間療法ではなく、正しい化学だ。

実際にどう使われているか

食べる: 料理にカイエンパウダーを加える——世界のほとんどの地域でほとんどの時間。インドのカレー、韓国のコチュジャン、四川の麻辣、日本のラー油——すべてこの果実を調理に使っているだけだ。最も使われている方法が最も語られにくい。

七味唐辛子: 日本の七つのスパイスブレンド。一般的な組成:赤唐辛子、山椒、ごま、麻の実、のり、ゆず皮、生姜または芥子の種(製造元により異なる)。多くの日本のレストランのテーブルにある卓上調味料。ラーメン、そば、うどん、焼き鳥、鍋にかける。配合は産地・製造元で異なり、意見が分かれる分野だ。

柚子胡椒: 九州の名産品。緑または赤の唐辛子とゆずの皮を塩で発酵させたペースト。風味が濃厚で少量で使う。焼き肉、鍋物、全般的な調味料として。柑橘、塩、発酵、唐辛子の組み合わせが生み出す味は、個々の素材のいずれとも異なる。

局所応用: カプサイシンは繰り返し塗布するとサブスタンスP(痛み信号の伝達に関わる神経ペプチド)を感覚神経末端から枯渇させる。これが商業的なカプサイシンクリームやパッチの鎮痛メカニズムの基礎だ。唐辛子を繰り返し食べると口が辛さを感じにくくなるのと同じ仕組み——神経末端が信号を報告するために必要な物質が枯渇するからだ。時間が経てば回復する。その間は痛みの経路が静かになる。

自分で育てられる?

できる——Capsicum annuum は日本での家庭栽培に比較的向いている。温暖な季節の作物:4〜5月に室内播種、最終霜後に移植、8〜10月に収穫。日当たりと暖かさが必要で、寒冷・多雨には弱い。南向きのベランダでのプランター栽培は十分現実的だ。

商業栽培は山形県などで行われているが、多くはインド、中国、韓国からの輸入。家庭栽培なら好みの辛さの品種を育てられる。乾燥して粉末にするには食品乾燥機か暑く乾燥した夏が必要だ。

日本での唐辛子

唐辛子は16世紀後半に日本に伝わった——朝鮮または中国経由で。だから「唐辛子(とうがらし)」という名前で、「唐」は中国(唐王朝)を指す。アメリカ原産ではなく、到着した経路を名前が記録している。

それ以来、欠かせない存在になった。七味唐辛子はほとんどの日本のレストランのテーブルにある。一味唐辛子——純粋な唐辛子のみ——はほとんどの日本の家庭にある。ラー油は標準的な調味料で、2010年代には凝った職人系のものも人気になった。柚子胡椒は今ではスーパーでも手に入る。

歴史的に著名な七味唐辛子の生産者:やげんぼり(東京)、七味家本舗(京都)、八幡屋礒五郎(長野)——それぞれ異なる配合を持つ。意見が存在するテーマだ。

よくある疑問

水が効かないのはなぜ? カプサイシンは脂溶性。水で広がる。乳製品のカゼインかアルコールが溶かす。パンやご飯は一部を吸収する。

鳥が痛くない理由は? TRPV1受容体がカプサイシンに反応しない。植物が哺乳類(種を壊す)には苦痛を、鳥(種を散布する)には無害を提供するためにそう進化させた。

インドやタイ料理はずっと唐辛子を使っていたの? いいえ。Capsicumはアメリカ原産。1500年代初頭にポルトガル・スペインの交易路を通じて到達した。それ以降のコロンブス後の食材だ。

スコヴィル値とは? 1912年に薬剤師ウィルバー・スコヴィルが考案した人間による官能試験。現在はHPLC化学分析に置き換えられているが、単位名は残っている。

日本ではどこで買える? 七味・一味唐辛子はどのスーパーでも。ラー油は一般的な調味料売り場で。柚子胡椒は専門食料品店や百貨店で。粉末カイエンはカルディコーヒーファーム、専門店、Amazon Japanで。

植物学的情報

植物界
ナス科
Capsicum annuum
使用部位果実(乾燥・粉末)
原産地熱帯アメリカ(メキシコ、ペルー、カリブ海)
人類の使用少なくとも6000年(アメリカ大陸);1500年CE以降は世界中
主産地インド、メキシコ、中国
辛度(カイエン)約3万〜5万スコヴィル

成分一覧

カプサイシノイド:

  • カプサイシン——主要成分
  • ジヒドロカプサイシン——第2の主要成分
  • ノルジヒドロカプサイシン
  • ホモカプサイシン
  • ホモジヒドロカプサイシン

カロテノイド(赤色色素):

  • カプサンチン
  • カプソルビン
  • β-カロテン

ビタミン・フラボノイド:

  • ビタミンC(生果実に多い)
  • ビタミンA(カロテノイドから)
  • ケルセチン
  • ルテオリン

関連項目

  • ショウガ(Zingiber officinale)——別の辛味成分(ジンゲロール/ショウガオール);TRPV1も活性化するが別の結合部位
  • ブラックペッパー(Piper nigrum)——ピペリンによる辛さ;コロンブスがカイエンと同じものだと思った植物
  • ターメリック(Curcuma longa)——ショウガ科;クルクミン成分;インド料理では唐辛子と組み合わせることが多い

参考文献

  • Perry L et al. “Starch fossils and the domestication and dispersal of chili peppers.” Science 2007
  • Caterina MJ et al. “The capsaicin receptor: a heat-activated ion channel in the pain pathway.” Nature 1997
  • Andrews J. Peppers: The Domesticated Capsicums. University of Texas Press, 1995
  • Scoville WL. “Note on capsicums.” J Am Pharm Assoc. 1912
  • Nunn NA. “The Columbian Exchange: A History of Disease, Food, and Ideas.” J Econ Perspect. 2010