
月見草(イブニングプリムローズ)
Oenothera biennis
主な成分
- Gamma-linolenic acid (GLA)
- Linoleic acid
- Oleic acid
- Stearic acid
- Palmitic acid
- Tocopherols (vitamin E)
- Beta-sitosterol
- Campesterol
- Polyphenols
伝統的な利用
- アトピー性皮膚炎のサポート
- PMS・乳房痛
- 糖尿病性神経障害
- リウマチ性関節炎のサポート

月見草の花は日暮れに開く。
花全体がこのために設計されている。淡い黄色の花弁はホークモス(スズメガ科)の目に夕暮れの光の中で見える。甘い芳香は光が弱まるにつれて強くなる。花弁は日が沈む数分の間に開く。ホークモスが到着し、ホバリングしながら蜜を吸い、20分前に開いた別の花へ花粉を運ぶ。朝になると花は閉じる。昼間は何も起きない。
この植物の種子油が植物油の中でも希少なGLAの供給源であることは、全く別の話だ。ガのための花設計と珍しい脂肪酸プロファイルは関係がない。ただ、同じ植物の中に両方存在している。
植物としての姿
北米原産の二年生野草で、現在はヨーロッパをはじめ世界中に帰化している。一年目はロゼット状の葉だけ。二年目に50〜200cmの花茎を伸ばし、大きな淡黄色の四弁花を咲かせる。荒れ地、路傍、撹乱を受けた空地を好む。
1614年頃にヨーロッパへ植物学的珍品として持ち込まれた——薬用目的ではなく、単なる珍しい植物として。数十年で帰化し、ヨーロッパの道端の雑草になった。300年後、1970〜80年代の研究者が種子油の成分を調べ、GLAの含量に気づいた。
日本では月見草(つきみそう)という名前が定着している。月を愛でる季節に夕方から花を開く姿が、お月見の伝統と結びついた命名だ。月が出る頃に咲く花として自然に連想された。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 科名 | アカバナ科(Onagraceae) |
| 学名 | Oenothera biennis |
| 別名 | 月見草(日本)、Common evening primrose |
| 生活型 | 二年草 |
| 原産地 | 北米東部(現在は世界各地に帰化) |
| 利用部位 | 種子(コールドプレスオイル) |
酵素問題——GLAがなぜ重要か
GLA(ガンマリノレン酸)の話には、簡単な代謝経路の説明が必要だ。
オメガ6脂肪酸にはリノール酸(LA)が含まれる——植物油や種子油に広く含まれる一般的な脂肪酸だ。体内ではデルタ6脱飽和酵素という酵素がLAをGLAに変換する。GLAはさらにDGLA(ジホモガンマリノレン酸)に変換され、最終的に抗炎症性のプロスタグランジンE1(PGE1)になる。
健康な人ではこの経路は効率よく動く。しかし加齢、糖尿病、アルコール摂取、ウイルス感染、トランス脂肪の摂取、一部の栄養不足によってデルタ6脱飽和酵素の活性が低下する。酵素活性が低い人はLAからGLAを効率よく作れず、抗炎症性プロスタグランジン経路の入り口で詰まる。
月見草油はGLAを直接供給する。壊れた酵素のステップを飛ばして、体が必要としている中間体を直接届ける。これがGLA補充の薬理学的根拠であり、月見草油の全ての応用の基礎にある考え方だ。
GLAの含有量
月見草種子油に含まれるGLAは約8〜10%。植物油の中では高い部類だが、最高ではない。
- ボリジ油(Borago officinalis):GLA 20〜25%
- クロフサスグリ種子油:GLA 15〜18%
- 月見草油:GLA 8〜10%
最もGLA含量が高い植物油はボリジ油だ。月見草油の強みは、三つの中で最も大きな臨床試験のデータベースを持つこと。どちらも同じGLA補充の根拠で使われている。
油の残りの成分はほとんどがリノール酸(70〜80%)で、少量のオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、トコフェロール(ビタミンE)が含まれる。
| 化合物 | 油中の割合(目安) |
|---|---|
| リノール酸(LA) | 70〜80% |
| ガンマリノレン酸(GLA) | 8〜10% |
| オレイン酸 | 6〜11% |
| ステアリン酸 | 1.5〜3.5% |
| パルミチン酸 | 5〜8% |
| γトコフェロール(ビタミンE) | 微量 |
| ベータシトステロール | 微量 |
| カンペステロール | 微量 |
実際の使い方
標準的な使用法(ソフトゲルカプセル): 1カプセル500〜1000mg、1日1〜3g。月見草油は酸化しやすいため、トコフェロール添加・品質管理された製品を選ぶ。バルク液体より密封カプセルが保存性で優れる。
アトピー性皮膚炎: 1日2〜4g、最低12週間続けて効果を評価する。脂肪酸代謝経路への介入なので、急性治療ではなく数週間〜数カ月かけて効果が現れる。2003年のMorse & Horrobin レビューは26のRCTを評価し、特に掻痒の軽減に中程度の効果傾向があると結論した。アトピー患者の中でも必須脂肪酸代謝に異常が確認されているサブグループで効果がより説得力を持つ。
PMS・乳房痛: 症状が出る2〜3週間前から飲み始め、月経前期を通じて継続する。
糖尿病性神経障害: 臨床試験では1日6gの高用量が使われた。標準的な500mgカプセルでは不足する量であることに注意。
外用: スキンケア製品や湿疹用クリームに配合される形で皮膚に吸用可能。皮膚バリア機能に寄与するとされる。
自分で育てられますか?
簡単に育てられる。月見草は乾燥した痩せた土壌の日当たりの良い場所でよく育つ。一度植えると自家採種で広がり、放置すれば荒れ地を占領するほどの繁殖力だ。日本では全国の路傍や河川敷に帰化している。
種子油の抽出にはコールドプレス機器が必要なので、自家製油は現実的ではない。植物を育てることは簡単だが、小さな種子から油を搾ることは家庭規模では難しい。
日本での月見草
月見草(つきみそう)は日本語として最も詩的な植物名のひとつだ。薬用としての利用が知られる前に、夕暮れに花を開く姿が観察され、お月見(秋の月見文化)と結びつけられた。月が昇る頃に咲く花として自然に連想された命名だ。
月見草はヨーロッパ経由で日本に帰化し、現在は全国の路傍・河川敷・荒れ地に普通に見られる。種子油のサプリメントは日本市場でも流通しており、主に肌の健康(アトピーサポート)と女性の健康(PMS、乳房痛)の文脈で販売されている。GLAの代謝機序は日本のサプリメントマーケティングでも説明されるようになっている。
よくある質問
Q. なぜ夕方だけ花が開くのか? スズメガ科(Sphingidae)のガが主要な花粉媒介者だ。ハチドリに似たホバリング飛行をするこの大型のガは、日暮れと夜間に活動する。花の開花タイミング——日没直後——はこの花粉媒介者の活動時間を正確に狙っている。強い甘い香りも夕方に強くなる。昼間に開く花は主要な花粉媒介者に完全に素通りされる。
Q. GLAとは何か? リノール酸(植物油に広く含まれる)と抗炎症性プロスタグランジンの間の代謝中間体であるオメガ6脂肪酸だ。デルタ6脱飽和酵素が壊れている人はリノール酸からGLAを作れない。月見草油はGLAを直接供給することで、壊れた酵素ステップを迂回する。
Q. ボリジ油との違いは? ボリジ油はGLAが20〜25%で、月見草油の8〜10%より多い。純粋なGLA補充という観点では1g当たりのGLAはボリジ油が多い。月見草油は臨床試験のデータが多い。クロフサスグリ種子油は両者と異なる脂肪酸プロファイルを持ち、ステアリドン酸(デルタ6脱飽和酵素ステップを別の方法で迂回できる脂肪酸)も含む。
植物学的な詳細
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Oenothera biennis L. |
| 科名 | アカバナ科(Onagraceae) |
| 近縁種 | O. lamarckiana、O. californica |
| 生活型 | 二年草 |
| 原産地 | 北米東部 |
| 主要生産地 | 英国、ニュージーランド、中国、南アフリカ(種子の商業栽培) |
| 日本 | 月見草として帰化;サプリメント市場 |
| 利用部位 | 種子(コールドプレスオイル) |
含有化合物一覧
| 化合物 | 油中割合 | 備考 |
|---|---|---|
| リノール酸(LA, 18:2 n-6) | 70〜80% | 主要成分 |
| ガンマリノレン酸(GLA, 18:3 n-6) | 8〜10% | GLA補充の主目的成分 |
| オレイン酸(18:1 n-9) | 6〜11% | — |
| パルミチン酸(16:0) | 5〜8% | — |
| ステアリン酸(18:0) | 1.5〜3.5% | — |
| アルファリノレン酸(18:3 n-3) | 微量 | — |
| γトコフェロール(ビタミンE) | 微量 | 酸化防止 |
| ベータシトステロール | 微量 | フィトステロール |
| カンペステロール | 微量 | フィトステロール |
関連するハーブ
参考文献
- Morse PF, Horrobin DF, et al. Meta-analysis of placebo-controlled studies of the efficacy of Epogam in the treatment of atopic eczema. Br J Dermatol. 1989;121(1):75-90.
- Jamal GA, Carmichael H. The effect of gamma-linolenic acid on human diabetic peripheral neuropathy. Diabetic Med. 1990;7(4):319-323.
- Horrobin DF. Fatty acid metabolism in health and disease. Am J Clin Nutr. 1993;57(5 Suppl):732S-737S.
- Bamford JT, et al. Oral evening primrose oil and borage oil for eczema. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(4):CD004416.
- Chevallier A. Encyclopedia of Herbal Medicine. London: Dorling Kindersley; 2016.