
ブラックコホシュ
Actaea racemosa
主な成分
- アクテイン(Actein)
- シミシフゴシド(Cimicifugoside)
- 27-デオキシアクテイン(27-Deoxyactein)
- アセリノール(Acerinol)
- シミラセモシドA(Cimiracemoside A)
- フキノール酸(Fukinolic acid)
- シミシフゴ酸(Cimicifugic acids)
- イソフェルラ酸(Isoferulic acid)
- フォルモノネチン(Formononetin)
- カフェイン酸(Caffeic acid)
- サリチル酸(Salicylic acid)
- タンニン(Tannins)
伝統的な利用
- 更年期症状緩和——複数の臨床試験とメタ分析でホットフラッシュの頻度・重症度の減少が確認;ドイツ委員会E(German Commission E)が1989年にRemifemin(標準化エキス)を更年期・月経前症候群に承認;2010年のコクラン型メタ分析(16件のRCT)で一貫したエビデンス
- セロトニン作動性機序(エストロゲン作動性ではない)——数十年間、植物性エストロゲンとして分類されてきたが、2003年の研究でエストロゲン受容体に結合しないことが証明;現在の機序はセロトニン受容体(5-HT7)アゴニズムと理解され、これはホットフラッシュの血管運動症状にセロトニンが独立して関与することと一致する
- チェロキー族・アルゴンキン語族の伝統医療——欧州接触以前から「女性の不調」・月経不順・リウマチ性症状への使用;19世紀に先住民の使用法から欧米医学に導入
- Remifemin(レミフェミン)エキス——ほとんどの臨床試験で使用された標準化ドイツ製薬エキス;1日2回20〜40mg;臨床エビデンスベースはこの特定エキスのもので、汎用ブラックコホシュ製品とは異なる

薬は1989年にドイツで承認された。作用機序が解明されたのは2003年だった。
ドイツ委員会Eはブラックコホシュ根エキス(Remifemin)を更年期・月経前症候群に対して、臨床試験のエビデンスに基づいて承認した。その決定は——適切にも——植物が何をするか、つまりホットフラッシュを減らすという事実に基づいていた。どうやってそれをするかの完全な理解に基づいてではなく。作用機序は植物性エストロゲンであると推定された——誤って。
2000年代初頭に優れた研究が届いたとき、ブラックコホシュはエストロゲン受容体に結合しないことがわかった。機序はセロトニン作動性だった。承認は正しかった。説明が間違っていた。
植物としての姿
北米東部の森の、優雅で背の高い多年草。開花時に1.5〜2.5m、白い小さな花が長い棒状の総状花序に並ぶ。根と根茎は黒色——通称の由来。アルゴンキン語の cohosh は「粗い・でこぼこ」で、根茎の質感を表す。
花は不快な臭いがして、ハエを引き寄せる。これは設計通りだ。
| 詳細 | |
|---|---|
| 科 | キンポウゲ科(Ranunculaceae) |
| 学名 | Actaea racemosa(旧名 Cimicifuga racemosa) |
| 別名 | ブラック・スネークルート;バグベーン;升麻代用(しょうまだいよう、日本) |
| 生活型 | 多年草 |
| 原産地 | 北米東部の落葉林 |
| 使用部位 | 根・根茎 |
作用機序の問題
約20年間、ブラックコホシュは植物性エストロゲンとして分類されていた——エストロゲンを模倣することで作用すると推定されていた。ホットフラッシュはエストロゲン低下が原因;このハーブはホットフラッシュを減らした;したがってエストロゲンに関連した機序に違いない。この論理は誤りだった。
2003年、Jarry らがブラックコホシュはエストロゲン受容体に結合しないことを実証した。続く研究でセロトニン受容体アゴニズム(特に5-HT7受容体)が有効な機序として同定された。これが重要なのは、セロトニン調節異常が更年期のホットフラッシュ生理に独立して関与しているからだ——閉経期の血管運動症状はエストロゲン低下だけが原因ではなく、セロトニンとノルエピネフリン経路も関わっている。セロトニン作動性機序はエストロゲン活性なしに有効性を説明する。
この区別は学術的なものではない。植物性エストロゲンという以前の分類は、エストロゲン感受性がん——特に乳癌サバイバー——を持つ女性への安全上の懸念を生んでいた。機序改訂は理論的なリスクプロファイルを変える。臨床指針は「ホルモン感受性の状態での禁忌」から「注意しながら使用、腫瘍専門医と相談」へと移行した。
エビデンス
更年期ホットフラッシュ減少の臨床試験エビデンスは複数の試験にわたって一貫している。ドイツの製薬製剤Remifemin(標準化エキス、1日2回20〜40mg)がほとんどの適切に設計された試験で使用された。16件のRCTのメタ分析でプラセボと比較したホットフラッシュ頻度・重症度の減少の一貫したエビデンスが示された。
効果の大きさ:プラセボと比較してホットフラッシュ頻度が約25〜30%減少。軽度から中等度の症状には意味のある効果だ。ただしホルモン補充療法(HRT)より効果は小さく、HRTは重篤な症状に対してより有効だ。
臨床試験エビデンスは標準化エキスに対するものであり、汎用製品に対するものではない。この区別は重要——ブラックコホシュ製品間で成分含有量と品質は大幅に異なる。
チェロキー族の起源
ブラックコホシュはチェロキー族・アルゴンキン語族その他の北米東部先住民族が、欧州接触以前から女性の健康状態——月経不順・難産・「女性の虚弱」——に使用していた。cohosh という名前はアルゴンキン語だ。
19世紀に欧米系の医師が先住民のハーバリストとの接触を通じてこれに出会った。1820年から1926年まで米国薬局方に収載された。ドイツの製薬会社が20世紀に文書化された伝統的使用に基づいて標準化エキスを開発した。1989年のRemifemin承認が、先住民の知識から製薬製品への道のりを完結させた。
化学成分
トリテルペングリコシド(アクテイン、シミシフゴシド、27-デオキシアクテイン):主要薬理化合物;セロトニン作動性活性が主にこれらの化合物で同定された。
シミシフゴ酸とフキノール酸:全体的な活性プロファイルに寄与する。
イソフェルラ酸:抗炎症作用。
| 化合物 | クラス |
|---|---|
| アクテイン | トリテルペングリコシド |
| シミシフゴシド | トリテルペングリコシド |
| 27-デオキシアクテイン | トリテルペングリコシド |
| アセリノール | トリテルペングリコシド |
| シミラセモシドA | トリテルペングリコシド |
| フキノール酸 | ヒドロキシケイ皮酸エステル |
| シミシフゴ酸A〜D | カフェイン酸エステル |
| イソフェルラ酸 | ヒドロキシケイ皮酸 |
| フォルモノネチン | イソフラボン |
| カフェイン酸 | ヒドロキシケイ皮酸 |
| サリチル酸 | フェノール酸 |
| タンニン | ポリフェノール |
実際の使い方
標準化エキス(主要臨床用途): RemifeминまたはRemifemin同等品、1日2回20〜40mg。ほとんどの臨床試験エビデンスがこの特定製剤のもの。効果発現まで4〜8週間を見込む。
一般的な推奨: 休憩を入れず連続使用は6ヶ月まで。未解決の肝毒性シグナルを考慮した予防的指針。
チンキ剤: 根チンキ1〜2mLを1日2回。製薬製剤より標準化度は低い。
配合製品: ブラックコホシュはセント・ジョーンズ・ワート、当帰、セージなどと組み合わせた更年期サポート製品によく見られる。臨床エビデンスは単一ハーブ製剤に対するもの。
自分で育てられますか?
北米東部または温帯の林縁ガーデンでは可能だが、陰性で生育の遅い植物だ。完全陰から半陰、湿った腐植質豊かな土壌。夏の開花茎は建築的なドラマを庭に加える。
野生採取による保全上の懸念がある。倫理的・持続可能性の観点から栽培品が推奨される。
日本でのブラックコホシュ
日本自生の Actaea/Cimicifuga 種は漢方で升麻(しょうま)として使用される——感染症・頭痛・発熱への応用で西洋の更年期用途とは別物だ。
西洋のブラックコホシュサプリメント(ブラックコホシュ)は日本でも更年期サポートとして入手可能。Remifemin(レミフェミン)エキスは日本でも流通している。日本の更年期を迎える女性がアダプトゲンやホルモンバランスサプリメントの選択肢の一つとして接触することになる。機序改訂の情報は英語圏より日本の一般消費者には届きにくいため、製品説明に「植物性エストロゲン」と記載されていても2003年以降のエビデンスでは否定されていることを把握しておく価値がある。
よくある質問
植物性エストロゲンですか? いいえ——2003年の研究がエストロゲン受容体への結合を否定した。機序はセロトニン作動性(5-HT7受容体アゴニズム)。以前の植物性エストロゲン分類は誤りだった。
Remifemin(レミフェミン)とは何ですか? 1989年にドイツ委員会Eが承認した標準化製薬エキス、1日2回20〜40mg。ほとんどの臨床エビデンスがこの製剤のもの。
肝リスクはありますか? 文献に約40〜70件の肝障害症例報告がある;因果関係は明確ではない。標準指針:連続使用6ヶ月以内;黄疸・暗色尿が現れたら中止。
乳癌サバイバーに安全ですか? 機序改訂により理論的な懸念は低下。現在の指針は「注意して使用;腫瘍専門医に相談」であり、「禁忌」ではない。
植物学的な詳細
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 科 | キンポウゲ科(Ranunculaceae) |
| 学名 | Actaea racemosa L.(旧名 Cimicifuga racemosa) |
| 近縁種 | A. cimicifuga(Cimicifuga foetida、中国で使用);日本自生の Actaea spp.(升麻、しょうま) |
| 生活型 | 多年草 |
| 原産地 | 北米東部(ケベック〜フロリダ) |
| 主要産地 | 米国東部野生採取;栽培品拡大中 |
| 日本 | ブラックコホシュサプリメント;升麻(しょうま、近縁種)が漢方に使用 |
| 使用部位 | 根・根茎 |
含有化合物一覧
| 化合物 | クラス |
|---|---|
| アクテイン | トリテルペングリコシド |
| シミシフゴシド | トリテルペングリコシド |
| 27-デオキシアクテイン | トリテルペングリコシド |
| アセリノール | トリテルペングリコシド |
| シミラセモシドA〜F | トリテルペングリコシド |
| フキノール酸 | カフェイン酸エステル |
| シミシフゴ酸A | カフェイン酸エステル |
| シミシフゴ酸B | カフェイン酸エステル |
| イソフェルラ酸 | ヒドロキシケイ皮酸 |
| フォルモノネチン | イソフラボン |
| カフェイン酸 | ヒドロキシケイ皮酸 |
| フェルラ酸 | ヒドロキシケイ皮酸 |
| サリチル酸 | フェノール酸 |
| タンニン | ポリフェノール |
| 樹脂 | 混合化合物 |
関連するハーブ
- アシュワガンダ——閉経周辺期ストレスへのエビデンスがあるアダプトゲン;機序は異なる
- バレリアン(セイヨウカノコソウ)——更年期の睡眠サポート;セロトニン機序が重複
- レッドクローバー(アカツメクサ)——真の植物性エストロゲンであるイソフラボンハーブ;比較が参考になる
参考文献
- Jarry, H. et al. (2003). Evidence for estrogen receptor β-selective activity of Cimicifuga racemosa. Planta Medica, 69(10), 945–947.
- Borrelli, F. & Ernst, E. (2008). Black cohosh for menopausal symptoms. Pharmacological Research, 58(1), 8–14.
- Ross, S.M. (2012). Menopause: A standardized extract of black cohosh (Remifemin). Holistic Nursing Practice, 26(1), 58–61.
- NCCIH. (2020). Black Cohosh. National Institutes of Health.